「いつかは誰かがやらねばならないことがある。
佐治敬三
だからうちがやる」
サントリーは日本最大の酒造メーカーです。佐治敬三はサントリーの創業者、鳥井信治郎の次男(小学生の時に母方の縁者と養子縁組をした関係、佐治姓です)としてこの会社を継ぎました。
ここだけ聞いて「なんの苦労もない2代目社長では？」「悪しき世襲制」と眉をひそめる人もいると思いますが、もちろん、ダメな2代目社長がいることは事実ですが、佐治敬三はただの2代目社長ではありませんでした。
佐治敬三は、大阪帝国大学を卒業し、終戦の昭和20年(1945)年にサントリーの前身である寿屋に入社しました。当時の寿屋の主力商品は「赤玉ポートワイン」と「白札」「角瓶」という2種類のウイスキーで、300名ほどの従業員で切り盛りする酒造メーカーでした。
これを日本最大のメーカーに育て上げたのが佐治敬三でした。
高度経済成長には「洋酒と名がつけばいくらでも売れました」(佐治敬三談)という経験をしたが、佐治敬三は、そのぬるま湯にただ浸ってることではありませんでした。ビール業界への再進出という大英断を下しました。
当時、ビール業界はキリンビール、サッポロビール、アサヒビールの大手3社による寡占状態であり、新規参入のと余地などありえないように思えたのですが、だが、彼は「努力しなければ会社はやがて傾く」「寡占状態をいくかは打ち破らなければならないときがくる」と考え、ハイリスクを覚悟で、再進出を強行しました。
予想通り、サントリーのビール部門は苦戦を強いられ赤字が続きましたが、平成16年 2004年に初めて黒字となり、その翌年の同社のビールがモンドセレクションで金賞を受賞するという栄誉を得ました。
それは、「いつかは誰かがやらねばならないことがある。だからうちがやる」という佐治スピリットが、ようやく結実した瞬間といえます。